かもめ食堂

フィンランドの静かな街で、「小さな子ども」のような日本人女性がひとりで経営している「かもめ食堂」。少しずつ人が訪れるにつれ、まったく無音だった空間に音が満ちてくる。小林聡美の凛とした姿がほとんどこの映画のすべてであるように思えるけれど、そ…

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

タイトルは「神よ、何ゆえに我を見捨てたもうや」という意味のヘブライ語だそうだ。レミング病と呼ばれる、感染すると自殺願望が高まる病気が蔓延する2015年の、たぶん日本が舞台。 たぶん、と書いたのは、はたして日本にこんな土地が存在するの?と思う…

亀は意外と速く泳ぐ

冬ごもりの時期なのにいろんなお誘いがあって、おかげさまでこの先とうぶん退屈しなくてすみそうです。でもベースは冬眠ですので、今日はひとつ飲み会をお休みして(ごめんなさい)、毛むくじゃらのグルミーと遊んでみました。 それで、「時効警察」の未見だ…

おことわり

「ある種の書かれたものはフィクションである」ということについて説明する必要が生じたので、ゆうべ眠いあたまで長い文章を書いて、起きてから推敲して掲載しようかと思いましたが、やはりいちいち説明する、というのは美しくないと思うので、そのままお蔵…

冬ごもりがはじまる

家出少女がどうやら仕事を手に入れたらしい。あとは住むところだが、それももしかしたらこの家に住むのかもしれず、まあそれも必然的な流れかなと思いながらお祝いの電話を入れたら、コタツは出しましたか、という。コタツを出したら遊びにいきます、という…

無花果の顔

DVDで桃井かおり監督の『無花果の顔』を観た。のっけから、自然なような、不自然なような、父と母と娘と息子の会話が独特のカメラアングルで交わされて、面白いなあ、と思っていたらそんなものは序の口で驚いた。桃井的リアリズム、とでも呼ぶしかないような…

路上でも森でも

仲俣ブレインズの三回目。打ち上げは渋谷の店を転々とした。始発の時間を迎えてもなんとなく帰りたくなくて、散歩しようよ、とか言っちゃったりして、結局朝の8時半まで渋谷で過ごした。なんていうか、ほんとに楽しかったのだ。

録音マニア

人と話す時にテレコを回す癖がついた。そのせいで、うちに転がりこんだ家出少女に「録音マニアですか?」となじられる。そういうわけじゃないけど、なんとなく声を残しいのだ。……存在のたしかな証拠が欲しいからか。いやむしろ、存在をかき消したいのじゃな…

ちくま日本文学など

家出少女からのメールに返事を書いたら、少し元気になった。なんてことはない他人とのやりとりが少しあるだけで、だいぶ気持ちがラクになるようだ。この家は夜になると人が増えるのだが、昼間はやはり少ないので自分の意識が膨張する。でも、いくら膨らんで…

レースが読めない

天気もよくて暖かいので、仕事をほっぽり出してひさしぶりに競馬場に行こうかと考えた。彼女を誘ってはみたが、もちろんメールの返事はない。暖かくて、きっとターフは気持ちいいのにな。今日はジャパンカップ。これが終わると府中での開催はしばらくない。 …

今夜のLife

今夜の文化系トークラジオLifeは深夜1時半から。ネット中継でも聴けるので、地方の人もぜひ。 http://www.tbsradio.jp/life/ ゲストの荻上チキさんについてはこちら。 http://d.hatena.ne.jp/utubosky/20071123/p1

子どもの島に生きる

今日も彼女と連絡がとれない。これでもう何日目だ、と考えると怖くなるのでやめてしまった。彼女の友人によれば、失踪したわけではないらしい。生きていればまあいいかと思ってしまう。たぶんそこが致命的である。 ところで、星野智幸の『ロンリー・ハーツ・…

荻上チキ『ウェブ炎上』

今週日曜深夜放送「文化系トークラジオLife」のゲスト、荻上チキさんの『ウェブ炎上』を読みました。理路整然としながら愛嬌のある文章(カワイイ)、豊富な事例(お買い得)、わかりやすい喩え話(のび太とか)、などなど。ウェブを良いとか悪いとか道徳的…

星野智幸の〈森〉

ひきつづき星野智幸を読む。仲俣暁生『極西文学論』の第三章「路上と森」に、星野智幸の『ファンタジスタ』が登場するのだ。ケルアックの〈路上〉は『オン・ザ・ロード』として新訳された。いっぽう、文学作品における〈森〉といえばやはり大江健三郎のイメ…

亡霊たちの会話

今日も彼女は電話に出ない。気がつくと、部屋にあったはずの歯ブラシ、それに化粧道具一式が消えていた。 次回の仲俣ブレインズに向けて、星野智幸を集中的に読む。 自分が何人にも分裂して収拾つかないことがときどきあるのに、それをほっぽってきたツケが…

どうも、何かが変なのです。

旅から戻ったら、彼女と連絡とれなくなった。 メールの返事はなく電話にも出ない。よくあることだけど、よくあることではないのかも。 長くつきあい過ぎた彼氏との会話は上滑りし、好きだという気持ちもすでにおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記…

Life本刊行記念イベント

Life本がついに発売されました。以下、コピペ&転送大歓迎。 11日の日曜日、紀伊國屋ホールを埋めつくしたいものです。 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 『文化系トークラジオLife』刊行記念トークイベント 【ポスト「失われた10年」に語るべきこと】 新宿・…

リハビリテーション

風邪を引いてしまった。でも引いてよかった、という気もする。大きな仕事を終えたあとの無理が、精神的にはもっとも危険なのである。だからここ数日は、いささか非社交的な(というかほとんど引きこもり同然の)生活を心がけてみた。半径5メートルの同心円…

Life「しょうらいのゆめ」

今夜のTBS文化系トークラジオLifeのテーマは「しょうらいのゆめ」。このあと深夜1時30分から。ウェブ中継もやるみたい。http://www.tbsradio.jp/life/

下北沢周辺

追い込み作業。深夜、自転車でいくつかの場所を移動する。東北沢へ抜けるために思い切って違う道を通ったら、意外なショートカットを見つけた。そうか、こうなっていたのか。アタマの中の地図が書き換わっていく。 かつてこのあたりは、当時新しく作ろうとし…

仲俣BRAINZ第2回

なんとか入稿にこぎつけて、批評家・佐々木敦さんが主宰する渋谷の学校「BRAINZ」へ。仲俣暁生さんの「精読『極西文学論』」の第2回。DVDを流したり、CDをかけたり。終了後は、教室内で1時間ほどフリートーク。「ぶっちゃけ村上春樹ってどうよ」話から、阿…

お気楽実験マウス

もはやついに終わりかと思うくらいの絶望を経験したはずが、一夜明けたら意外にケロっとしていて、そういうケロケロけろっぴな我が身の軽薄さっつーか、ある意味でのタフさというか、ほとんどもう感情的に死んでるんじゃね?ってぐらいの鉄仮面ぶりに今さら…

やはりロマンだよ

いよいよ仕事が大詰めクライマックス。というわけで、とりいそぎメモのみ。 昨夜パラパラめくった堀江敏幸の『アイロンと朝の詩人 回送電車3』がどうも素晴らしい。さまざまな媒体に書いた文章を堀江敏幸みずから装丁して一冊の本にしたものだが、ひとつひ…

番外編(告知)

前回までの話は、批評とかを離れて大雑把な文脈でいえば、「失われた10年」が終わってみたらデータベース的な時代に突入したんだけど、それでいいのかよ、じゃあそこで何を話せばいいんだよ、っていう話でもありました。 ということで、まさにそのテーマ【ポ…

だってなんだもん

肉体、精神ともに限界を超え、夢の中で校正という無駄な作業をした挙げ句、仮眠から目覚める……。えっと、“現実に”俺がしたこと、していないことはなんだ? と確認しながら、元気を出して図書館へ。珈琲豆と紙とインクもついでに買ってくる。 この頃はやりの…

ロマン主義的批評(仮)宣言5

前回で終わらせようと思ったのに終わらなかった。ここで書いていることは何も目新しいことはない。すべて、誰か先行する者の言葉であり、ただそれを「ロマン主義的批評(仮)」という旗の下に寄せ集めているにすぎない。きわめて二十世紀的な古臭いことだと…

ロマン主義的批評(仮)宣言4

期末試験前に別のことに逃避するような感覚で、この「ロマン主義的批評(仮)宣言」などというものを書き始めてしまったせいで、仲俣さんのブログからのアクセスが急に増えている。ふだん、推定6人しかいないと思われる読者に向けて書いている当ブログにと…

ロマン主義的批評(仮)宣言2

批評と現代思想 前回、エントリーの最後で「不自由」と表現したのは、批評といえばこう、というある種のフォーマットが出来上がっていて、そこから逸脱することが難しいように思えたからである。どうも文芸誌に掲載される批評のほとんどはちゃんと読む気にな…

ロマン主義的批評(仮)宣言3

さて前回、批評とはこういうものだという先入観を打ち捨てたことで、では批評とは何かと、そういうことをようやく考えられる地点に立った。批評とは、一般には書かれたものを指すわけだが、仲俣暁生さんの提起によって、「批評」はひとつの読み方(批評的な…

駐車場で街が変わる?

下高井戸にひさしぶりに行ったら、市場の一角が駐車場になっていてびっくりした(もちぶたラーメンの対面)。センス悪っ、と最初は思ったのだが、バランスが変化したことでこれまでと全然ちがう街に見えて、結果的には新鮮な感じがした。街は休日とあって人…