冬ごもりがはじまる


家出少女がどうやら仕事を手に入れたらしい。あとは住むところだが、それももしかしたらこの家に住むのかもしれず、まあそれも必然的な流れかなと思いながらお祝いの電話を入れたら、コタツは出しましたか、という。コタツを出したら遊びにいきます、というのである。ちょうど、明日までに返さなくてはいけないDVDもあるし、鍋でもしながらビール飲んで、だらだらと家出少女と映画を観るのもわるくないかなと思ってコタツを押入れからひっぱりだしたら、そこに毛むくじゃらのグルミーがくっついていた。


だいたいあんたってロアク的なのよ、と毛むくじゃらのグルミーはいう。ロアク的、を露悪的に返還するのに戸惑っていると、そんなことわかんないなんてバッカじゃないのと怒られた。果してこの毛むくじゃらのグルミーは女性なのだろうか、と考えていると、またほらすぐにそうやって色分けしようとする、そんなこと気にするあたりがミミッチイんだよね、とまた怒られる。どうやら頭の中で考えていることを読まれてしまうらしい。しかもかなり口が悪いらしい。気をつけなくては。


押入れの中からは、数年前に書いたらしいこんなメモも見つかった。

 言葉は口にした途端に嘘臭くなるから、僕たちは口をつぐみ書くのだと思う。アイシテルというただそれだけを言うために長い長い物語を書き、ときには泣ける話を書いてみたりもするだろう。でもやっぱりそれも嘘かもしれない。だとしたらいい嘘をつきたいと思う。愛のある嘘をつきたいと思う。せめて誰かひとりにでも、たったひとりにでも、この気持ちが届くようなそんな嘘をつきたいと思うのだ。