「島宇宙からの脱出」

論座』5月号に、charlieこと鈴木謙介が「情報時代のガイダンス 島宇宙からの脱出と「文化系トークラジオ Life」の挑戦」という文章を寄せている。ちょうど4月1日(日)の朝日新聞にまたもや例の「ロストジェネレーション」の記事が載っていたが、charlieが憤慨しているのは、「ロストジェネレーション」や「格差社会」といったキャッチーな名付けによって若者たちが「被害者」として認定され、「政治的動員」に向けた「賭け金」として利用されることに対してである。朝日新聞にははっきり「連帯しよう」と書いてあった。だが、敵はどこにいるのか?

「失われた世代」という言い方は、責任の主体を巧妙に隠している。だから、若者たちを呼ぶとしたら、「奪われた世代」というべきだとcharlieはいう。その語り口はクールだが、熱っぽい。

奪ったのは誰か。もちろん、いま彼らを「被害者」呼ばわりしている人たちを含めた年長者だ。では奪われたものとは何か。おそらくは、希望や可能性や安定や未来や夢といった、年長者が若者だった頃に、当たり前のようにそこにあったなにものかだ。


もしもこのcharlieの憤りが、『論座』(朝日新聞社)なり朝日新聞なりという、(まさにどちらも同じ系列の)閉じた論壇の内部でのみ流通するものであれば、それもまたひとつの自己完結的なループ(それこそ島宇宙)をつくってしまうことになる。研究というよりは論壇での応酬と化した最近の「社会学」に批判されるべき点は、まさにそこだったのではないか。


だが、彼には(そして私たちには)「Life」というツールがある。

私が「Life」において試みようとしていることのひとつは、私自身を含めた「奪われた」人びとに、起業して大人社会に挑戦するというのとは違うやり方で、そうした夢や希望が無限に広がっていそうでいて、その実、島のように閉じている島宇宙からの脱出法を提示する、ということである。無数の選択肢が用意された島宇宙の中にあっても、いやむしろそうであるからこそ、その中から「大人になる」ための道筋を示さなければならないというのが、私の考えだ。


「Life」はまさにそれ自体が島宇宙を駆け抜けてゆくブレイクスルーキットである。TBS文化系トークラジオLifeは、4月からは月に一度、日曜深夜枠での放送に変更。次回は4月22日深夜25時半から、2時間半の生放送。


 

論座 2007年 05月号 [雑誌]

論座 2007年 05月号 [雑誌]