男をやめる

今さらながら『文藝』2006年春号の星野智幸特集を読む。インタビュアーは才色兼備の瀧井朝世。星野智幸がメキシコと出会う経緯、そして中上健次について書いたくだりも興味深いが、『虹とクロエの物語』について書かれた箇所を引用しておく。

男をモデルにすると何だか未来が感じられなくなって希望がなくなりそうなので、小説の中に何か可能性を残そうとすると登場人物が女性になるんですよね。
(……)
男に可能性があるとしたら、男をやめることだと思うんです。男の既得権益を自覚して、それを手放し、依存しないことが必要です。でも彼もまだどうなるかわからないですね。ユウジは孤島に閉じこもっていて、一切の既得権と縁を切ったつもりだけど、実際には縁が切れていないことにずっと苛立っている。どこに行ったってご破算にはできないし、捨てることができない、でもそれを後ろめたく思って苛立つことから、男の可能性がようやく開けると思っているんです。

虹とクロエの物語

虹とクロエの物語