前夜

朝のうちに起き、午前中に洗濯。なんだかぼーっとしている。よく食べ物をとりこぼす。

「私は生きている」と強くは思わないにしても、それが感じられるときは意識が前にぐっ、と出ると同時に指先に血の流れが感知される。足の裏が地に付いているような。それを人は「リアリティ」と呼ぶのだろうが、今はその感覚がいちじるしく欠如していて、ただふわふわとそこにある。

彼はただそこにある。燃え上がるものは、ない。このうっすらとした浮遊感覚は、少し、哀しくもあるのだ。



明日からこの部屋で新しい生活がはじまる。彼は、キックと近所の定食屋で晩御飯を食べる。長期的な「編集」仕事について話す。これは、彼らにとっての「夢」なのだろうか? そうではない。彼らに「夢」という語彙はおそらくは存在しない。それでも彼は、俺たちはきっと何かをつかみつつある、と思う。

もちろんつねに、具体的な手がかりは必要だ。まずは図書館をめぐってみるか、と彼は考える。早寝早起きを心がける。