不安の書

眠れないので、フェルナンド・ペソア『不安の書』を読み進める。訳者あとがきで紹介されているブラジル版編纂者レイラ・ペロネ・モイゼスの言葉。(ソアレスとは、この本における語り手、会計士ベルナルド・ソアレスのこと)

『不安の書』は、それに近づき過ぎる者をやつれさせる書である。ペソアのいかなる他の作品よりも、主題として苦悩、意気消沈、傷心、儚さを取り上げている。一気に読むには耐えられない。その狡猾な否定性がわれわれに伝染する。しかしやめることもむずかしい。一歩進むたびにきらりと光る美しさにおどろかされる。テクストはペソアソアレスによって完璧になされた錬金術である。倦怠、挫折、不活動、停滞をテーマにし、そのエクリチュールは絶えず繰り返され、結局、成功をおさめている。その明白かつ公然たる手つきで、それらの断章はまれにみる成功裏に結晶する。


不安の書

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