昼すぎまで寝て居りました


眠れないので、荻原魚雷の『古本暮らし』を読む。担当編集者は中川六平さん。高円寺在住の著者による古本エッセイ、というと「いかにも」な感じがしてしまうのだが、運動にのめり込んでいたらしい過去がちらと見えたり、冷蔵庫の野菜の使い方が載っていたりで、興味は尽きない。

三十歳をすぎて、自分の限界みたいなものが見えてきて、自分は自分にできることをやるしかないとおもえるようになった。もちろんその決意はしょっちゅうゆらぎ、いまだにぐらぐらだ。二十代に仕事を転々として、生き方がさだまらなくて、世の中に出遅れてしまって、不本意な生活が続いた。それでもどうにかこうにか自分の場所のようなものがすこしずつだけど、でてきた。自分の場所のようなものができると、こんどはその場所を守ることばかり考えるようになって、だんだん身動きがとれなくなる。


これはもしや俺のことじゃないかと錯覚する。もう一点、引用されていた尾形亀之助の詩。(「昼、床にゐる」/特集『色ガラスの街』)

  今日は少し熱があります
  ちよつと風邪きみなのでせう
  明るい二階に
  昼すぎまで寝て居りました


古本暮らし

古本暮らし