誰も知らない


昨夜は熱中症みたくなって完全にダウン。それでも文化系トークラジオLifeはなんとしても聴こうと朝までラジオの前でがんばった。メールできなかったけど、本編のラストのほうで気になっていた話題(作り手との距離の変化とか)が出たみたいでよかったです。


で、本来それどころではないのだが、たまたま映画『誰も知らない』をビデオで観る。やっぱり是枝裕和はすごいなと、あらためて思った。フィクションとドキュメンタリーの手法ををうまく融合させることによって立ち上がるこのリアリズム。細かいところでは、「父親」のひとりに金を無心にいくシーンで、少年(柳楽優弥)がとても屈託のない感じの笑顔になっていて、ああ、なるほど人は、こういうもっともやばい苦境において皮肉にもこういう笑顔を見せたりするものかと思ったりもした。なんにつけても細やかな描写。ひとつひとつのシーンがすごく丁寧に撮られている感じがします。「糾弾」であるとか、あるいは昨日のLifeでも話題になった「カウンター、反体制」といった身振りでは表せない、人それぞれの複雑な想いが、ちょっとした表情や仕草の中に見事に収められている。


この映画を観るたび、ラストで、弟が兄の袖をひくシーンが印象に残る。今回はとくに、その前のカットで飛行機の音がして空が見えて、それで袖を引かれた兄がふっと“実際に”目の前にいる弟の顔を見るという、そのまなざしの「落差」が気になった。そういえばこれは、ふとしたことで「穴」に落ちてしまった少年少女の物語なのである(そう考えるとこれは、トリュフォーの『大人は判ってくれない』の現代日本版ともいえる)。世の中には無数の「穴」が開いていて、ちょっとしたことで、誰でもそこに落ちる可能性がある。にもかかわらず、穴の中のことは「誰も知らない」


今週はかなり忙しくなりそう。テンション上げていかないと。


誰も知らない [DVD]

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