朝日新聞書評欄


なんとなく今まで「エライ先生たちの書評」というお堅いイメージのあった朝日新聞書評欄だが、今日の書評からは少しやわらかい印象を受けた。書評委員が替わったせいだろうか。いろいろな意味で読ませる書評が載っている。(好きな人がいなくなったりもしたけれど。)たとえば、早稲田大学政治学を教えていた内田満の『政治の品位』を慶応大学の小林良彰が書評したり、若林幹夫『郊外の社会学』について『東京から考える』の北田暁大が書いたり。スキ・キム『通訳』についての巽孝之の書評も熱っぽくてすごくいい。


気になった本は、『テヘランでロリータを読む』のアーザル・ナフィーシーや映画監督のアッバス・キアロスタミ(この本では「キヤーロスタミー」と表記)ら15人の発言が収録された『イラン人は神の国イランをどう考えているか』。 編者のレイラ・アーザム・ザンギャネーについては名前すら知らなかったのだが、Amazonの紹介文を見てみると、次のようにある。

ジャーナリスト。国外に脱出したイラン人両親のもとパリで生まれ、フランス高等師範学校で文学・哲学を学んだのち、コロンビア大学で国際関係学の修士号を取得。ハーヴァード大学で文学、映画、ロマンス語を教えるかたわら、『ルモンド』『ニューヨーク・タイムズ』『ヘラルド・トリビューン』などに中東関連の記事を寄稿している。


すごいエリートだ。複数の言語を使いこなす越境的な知識人と思われる。同じくエリート路線で気になるのは、マサオ・ミヨシ×吉本光宏の『抵抗の場へ』。このマサオ・ミヨシという人の存在も知らなかった。柄谷行人の紹介によると、カリフォルニア大バークレー校で英文学の教授となったが、60年代に政治的活動にコミットしていく中でその座を放棄して「新たな道」に進んだのだという。ふむう、ほんとにぜんぜん知らなかった。


イラン人は神の国イランをどう考えているか

イラン人は神の国イランをどう考えているか

抵抗の場へ―あらゆる境界を越えるために

抵抗の場へ―あらゆる境界を越えるために



あと東京に関する本では、星野博美『迷子の自由』と四方田犬彦『月島物語ふたたび』あたりが気になる。後者は『月島物語』にいくつかのボーナストラックを追加したものだが、『月島物語』も未読。そういえば日誌『星とともに走る』(七月堂)で月島は特別な場所として書かれていたような気がする。というわけで、いろいろと読みたい気分になったのでした。


迷子の自由

迷子の自由

月島物語ふたたび

月島物語ふたたび