いい朝


朝の8時まで飲んで外に出たらとてもいい天気ですがすがしい思いがした。スペードとハートから、あなたはどっちにつくの?と問われているような気がして、でも今のところ決められなくて、それどころか何も考えられなくて、ついつい、いえ、ぼくはダイヤかも、なんていってしまいそうなあたりでみんなが乗ったタクシーを見送って、ひとり松屋で朝定食を食べた。


そしてふらふらと下北沢の朝を歩き、鉄橋の上に立ったらなんとなくフラッシュバックしてくる風景があって、そういうところって誰かの記憶が染み付いているんだよな、と感じながら、それ以上に今自分が誰の支配下にもなく、なんらの権力関係にもおかれず、右にいこうが、左に向かおうが、すべては私の気分次第なのだということを考えたら、これってほんとの意味でフリーなのかもしれないと思って、その開放感が青空に向かって突き抜けたこの朝に、唐突にいまこの場で朽ち果てたいという願望が現われた。


死にたいとか、そういうことではなくて、ただ朽ち果てたいのだ。


それにしてもとてもいい天気で、しばらくつづくであろうこの好天の中で、身のふりどころを考えてみようか、というのは嘘で、実際にはたぶん私は何も考えないだろうし、しばらくして地に足がつきかけた加減のところで、ふわふわと降り立った場所がたぶんとりあえず私がそこでやるところの場所なのだろうという気がして、だから今考えてもしょうがないっていうか、日常を駆動させるためのこのお日様、好天、やわらかく届いてくるこの陽光の中で我が身をぐうっと伸ばしてみたらそれはとても気持ちのいい朝なのだった。