閉じ込められた女たちの話

金原ひとみの『ハイドラ』を読む。ごく数人の登場人物の固有名詞だけでひたすらパスが回されていく感じが、たしかにリズムを作ってはいるのだが、その先に広がっていかないなと思っていたら、後半、ライヴのあたりからキラーパスが出された。でも、どうなんだろうか、この世界観は。主人公の私生活を覗き見するような感覚で最後まで読まされてしまう。


今さら綿矢りさと比べるのはナンセンスも甚だしいというかデリカシーに欠けるような後ろめたさを感じてしまうが、金原の『ハイドラ』も綿矢の『夢を与える』も、誘いに乗ってしまったためにある場所に閉じ込められてしまった女の話、という点では共通している。ひとつ踏み外せばすべてが崩れ去るような世界にいて、彼女たちは完全に逃げ場を失っている。いや、逃げつづけている、のかもしれない。何から?


傷つかないように、傷つかないように振る舞おうとして、けっきょく傷ついてしまう女たち。『ハイドラ』の中で唯一救いと思えるものは、松木という男を前にしたときの早希の変化だけだが、金原ひとみはその救いの芽を入念に潰してしまうのだった。ラストはしかし、光明がある。

 

ハイドラ

ハイドラ