『asta*』6月号

ポプラ社のPR誌『asta*』6月号。
http://www.poplarbeech.com/asta/asta.html
森見登美彦がおっぱいの話を書いていて相変わらず面白い。やはり舞台は京都だが、京都を舞台にする妄想小説は、京都に依存しているようで実は京都なんてどうでもいいのかもしれない。たとえば下北沢を舞台にする小説は(いい悪いは別にして)強烈に“現在”の下北沢に依存してしまいやすく、下北沢的登場人物たちの関係性の中に主人公は呑み込まれてしまう(と思う)。それはとりもなおさず、妄想が不可能である、ということではないだろうか。妄想は、ある意味では、人間関係をいったん遮断するところから始まる。いっぽう、モリミーをはじめとする京都が舞台の小説にとって“現在”はそれほど重要でないのかもしれず、だから主人公は“現在”つまり人間関係の網の目からいったん逃れて妄想を膨らませることが可能だ。

ちなみに森見登美彦氏のブログはこちら。タイトルがいかしてる。でも森見さん、ほんとはきっと乙女たちにモテるのだ。おのれモリミー!
http://d.hatena.ne.jp/Tomio/20070506


それから同じ『asta*』、西加奈子の「とっさのほうげん その8」は「いちびんな!」。昔付き合っていた彼氏が喫茶店をしていてそれを手伝っていたときの話。歳が近いせいもあるのか、西加奈子さんには時折共通する匂いを感じることがある。ある種の古くささを隠し持っているところとか(『気まぐれオレンジロード』とか)。それがたぶん、彼女の泥臭さの秘密。